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分子神経科学研究者、兼、麻酔科医、兼、ランナー、兼、作曲家 の随想録(ひとりごと)です。

歴史は繰り返す

 2016年11月8日、アメリカで新しい大統領が国民投票によって選出されました。
実際に国家的行動を取るかどうかは別としても、彼のイデオロギーの氷山の一角として現れるスローガンの数々。
移民排斥、貿易収支赤字に対する孤立主義、人種のるつぼとされた国における民族や宗教に対する分断。
私が生まれ育った時代のなかで、このようなイズムを掲げる大人が支持され尊敬され期待されるということは
経験したことがありませんでした。

 しかし、これまでの歴史においてはどうか?
おそらく、第二次大戦前の世界はまさしく彼のような指導者が各地で立ち上がり、各国民の支持を得て
声高にファシズムを掲げていた、あの時代を彷彿とさせることが、今起きているように感じられます。
当時、ナチスヒトラーによるドイツ、軍部が変質化していった日本、独裁ムッソリーニを擁したイタリア、スペインのフランコ
それだけではなく、アメリカにもフランスにも、そしてイギリスにも独裁をかかげる政党が一大勢力となっていました。
当時も、まさに第一次大戦後の戦争特需とヨーロッパの大打撃により繁栄を極めたアメリカの恐慌を契機とする世界恐慌
その引き金となっていました。

 現在もまた、世界経済を牽引してきたアメリカの国内不況、BRICSを中心とする新興国の信用不安と停滞、イスラム圏からの
移民問題などで揺れるヨーロッパ経済の不安定。これらの経済不況こそが、第二次大戦前に生じた、この他者の排斥、融和の挫折、
そして独自の民族主義を今世紀において呼び起こしつつあるのかもしれません。

 第二次大戦前と似ている状況といえば、こうしたイデオロギーや経済不況だけではありません。
奇抜な動画や、自ら危険な行為を動画におさめてインターネットにアップロードする多数の人々。これらの人々はちょうど、
世界恐慌が生じる前後のアメリカを中心に多数現れていました。大西洋の単独飛行を成功させたリンドバーグに続けと、
摩天楼の建築現場などにロープを張り、綱渡りをする人々がいました。時代の閉塞感という意味では当時も現在も
同じなのかもしれません、そこからどうにかして抜け出したいという願望が、表現方法は違えども現代の人々のなかにも
表出しつつある。

 歴史は繰り返す。しかし、繰り返してはならない歴史に待ったをかける努力、これも繰り返さなければなりません。これからの時代が、将来の人類が
繰り返すことを願ってくれるような、そんな誇れる時代を築きたいものです。