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分子神経科学研究者、兼、麻酔科医、兼、ランナー、兼、作曲家 の随想録(ひとりごと)です。

*社会問題の解決とは?

 スペインの哲学者、オルテガは、大衆という概念を確立したことで有名です。
彼によれば、大衆とは、おおざっぱにいえば、「自分が関わっている仕事や
身の回りさえよければ、社会全体や世界全体、地球規模の問題がどうであろうと
自分には関係ないや」といったような感じで、社会問題に対して無関心で
いつづける人々のことを指すようです。まあ、大抵の人間てそんなもんかもしれません。
ちなみに、オルテガいわく、この大衆というポジションをdominantなものにしたのは
科学者であると言っています。要は、自分の業績さえあげれば、原爆が落ちようが
細菌兵器が登場しようが知ったことか、というような科学者が出現しうる危険性を
常に秘めているためなのでしょうか。

 自分は、なんとかそれだけは避けようと心がけてはいますが…実践できているかどうか。

 さて、地球規模で生じている問題は挙げればきりがないほど存在していると
思いますが、今日の講義のトピックは、南北問題や貧富の格差の問題。いかに
先進国は途上国の内情を改善しうるか、という深いテーマ。

 講義を聴きながら、ふと思う。「日本は確かに戦後焼け野原から工業化を
達成し、ついに福祉国家にまで到達した。しかし、果たしてほんとに幸せな
感じを国民が受けているのか? かたや、途上国。確かにマスコミの情報を
みる限り、生活の便利さは日本のそれと比べようもない。しかし、果たして
ほんとに不幸せな感じを国民が受けているのか?」
さらに、「途上国が何十年後に先進国の仲間入りを達成したとして、
果たして幸せになるのか?今の日本が抱える闇の部分を、同じように
抱えることにならないか?だとしたら、国際協力って、実際どこまで
意味があるのだろう?」

 結局、人類の思考パターンや能力、こころが進化しない限り、歴史は繰り返される
だけではないのか。だとしたら、人類の進化は何がもたらすのか、科学?芸術?平等?
正義?法律?いずれにせよ、そこが変わらないことには解決といえないのでは?

 ガンダムの中に出てくる、ニュータイプという人類の覚醒の考え方、実は
本質をついているような気がします。人類が地球に住もうがコロニーに
住もうが、人類が変わらない限り社会問題は場所を変え時を変え、人を変えて
繰り返されるのではないでしょうか。

 社会に対して無関心でいることは、社会問題について議論するスタートラインを
放棄することになります。答えがなくても、やはり誰しも何らかの形で
議論に参加することが第一歩なのかもしれません。