ほんとはこわい家庭のたべもの1
感染症の授業ではそれぞれの細菌、ウイルス、カビ(真菌といいます)、寄生虫などがからだの中に感染することによって生じる病気や症状などをひとつずつ学習していきます。その中で、よく「これらの食品を食べるとこの細菌に感染しやすい」という1:1対応のようなフレーズを耳にします。
そこで、今回はそれらの一部を紹介させていただきます。ただし、断っておきますが、これはみなさんの不安をいたずらに煽るために紹介するのではありません、おそらく大半のケースではよほどひどい状態で保存されていた食品であったり、または食事をとったときのからだの防御システムが相当弱っていたり、わりと特殊な状況でこそまずいことになるので、ここでは「医学部では学生共はこんなことを教わっているのか」くらいの認識でよいと思います。
①手でにぎって作ったおにぎり → 黄色ぶどう球菌 → 3〜4時間後、食中毒で下痢、腹痛など
運動会の終わりのころにトイレに行列ができるのは、まさにこのぶどう球菌の仕業だといいます。
おにぎりを作る前には、よく石けんで手を洗いましょう、できれば70%エタノールでの消毒もしましょう。
②以前の牛肉などの輸入肉製品 → 病原性の大腸菌 (O-157など)
大腸菌は名前のとおり、ヒトや動物の消化管の中に生息しています。肉を加工するときに肉と消化管が触れてしまうと菌が肉のほうにもついてしまうことがあるそうです、以前病原性大腸菌O-157が猛威をふるって大量の感染症者を出したこともあって、最近では徹底した消毒作業や感染対策を行ってくださっていることを願いますが。
③缶詰、はちみつ、ソーセージ、辛子レンコン、いずし →ボツリヌス菌 →食中毒、神経の異常
ボツリヌス菌という菌は、酸素がないかとても薄い環境でしか生息できない菌なので、真空状態で密閉された食品の中ではむしろ彼らにとっては好都合なわけです。ボツリヌス菌はヒトの神経をおかしくさせる毒素をつくりだすので、呼吸困難、嚥下困難、目の調子がおかしくなる、唾液がでなくなる、などいろいろな症状がでます。 赤ちゃんでは野菜、くだもの、ハチミツなどでも発症することがあります、ハチミツはもう少し成長するまではしばらく我慢させましょう。
④パスタ、チャーハン、香辛料 →セレウス菌 →食中毒、もどしたり、水っぽい下痢
この菌はもともと土や水、ほこりなどに生息していて、これらが植物として自然にある時にすでに穀物や香辛料に移り住むことがあります。この菌でやっかいなのは、菌がつくりだす毒素は加熱しても無毒化することができないということです。したがって、パスタやチャーハンを勢いよく加熱しても、毒素による影響が生じることが十分ありえるのです。
⑤海外旅行で魚介類を食べたり海水を飲んだ →腸炎ビブリオ、またはコレラ →腸炎、水っぽい下痢や粘血便
腸炎ビブリオもコレラも東南アジアや南アジアなどの魚や水に生息していると考えられているので、よく輸入感染症とよばれています。日本の海水はどうでしょうか、僕は去年ライフセーバーの講習会で湘南海岸の海水を大量に飲みまくりました(救助訓練のため、パートナーとお互い助け助けられるので…)が、その後とくにおかしい症状はありませんでした。もちろん、1m先も見えないくらい汚れていましたが…。まあ、人間気の持ちようです、または知らぬが仏。そうするとこのブログ、全然だめですね(笑)。
さらに脅かすわけではありませんが、腸炎ビブリオがつくりだす毒素(TDH,耐熱性溶血毒といいます)は、へたすると心臓の筋肉の細胞に結合することで心停止が生じ、最悪の場合死亡にいたるということです。
他にもまだまだたくさん感染症がありますが、続きはまた次回!以下に紹介する医学生のテキスト、とてもわかりやすくて読みやすい、そしてしっかり専門的な情報も載っていますので参考にしてみてください。
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